DeNA初代監督・中畑清が愛情をこめて語る日本シリーズ優勝。熱いぜ! photograph by Keiji Ishikawa
ベイスターズが“史上最大の下剋上”を果たした日本シリーズ第6戦、中継放送席にいたDeNA初代監督・中畑清。勝利を目前にした9回に、明らかに涙声になる様子が話題になった。著書の『ベイスターズ再建録』でも中畑のロングインタビューを行ったライター・二宮氏が、あの涙の真意を直撃したNumberWebインタビュー。〈全2回の前編/後編はこちら〉 【写真】「ムキムキ裸体だぜ!」「ゼッコーチョー!」なぜこんな写真が!? ビックリすぎる現役時代のキヨシ秘蔵写真&古希の今も絶好調な様子&ベイスターズ日本シリーズ激闘のすべてを見る キヨシはこの夜、言葉を詰まらせていた。 横浜DeNAベイスターズが26年ぶりの日本一に王手を掛けて臨んだ、福岡ソフトバンクホークスとの日本シリーズ第6戦。11-2のまま9回表に突入し、3万3000人を超える大観衆をのみこんだハマスタに待ちに待った歓喜の瞬間が訪れようとしていた。 テレビ中継の解説席で、ちょっとした異変が起こっていた。それまで“絶口調”だったはずのDeNA初代監督である中畑清がまったく喋らなくなっていたからだ。 守護神の森原康平が柳田悠岐を三振に仕留めてゲームセット。ベンチでは三浦大輔監督がガッツポーズを繰り出し、グラウンドでは抱擁の輪が広がっていくなかでアナウンサーに促されるように中畑がやっとその口を開く。 「よくここまで成長してくれたなというのと、優勝してくれたというね、喜びですね。すごいチームになりましたね」 明らかな涙声。絞り出すように言葉を紡いだ。 あの瞬間、胸に迫った万感を、そしてチーム、選手への愛情とリスペクトが詰まっていた第6戦の解説をあらためて振り返ってもらうべく、中畑のもとを訪ねた。
――9回表はまったく喋っていなかったですね(笑)。 中畑 (優勝が近づく)あの雰囲気があったから、自分が喋らなくても大丈夫だったでしょうよ(笑)。 ――やっぱり泣いていたのですか?
中畑 本当のことを言うと、亡くなった女房が目の前に降りてきたんだよ。この景色を見せてあげたかったなと思ったら、一気にこみ上げてきちゃってな。俺が監督のころは(優勝を)想像もしてなかったし、監督がそんなこと思っちゃいけないんだけど、それくらい割り切って戦っていたところはあったから。 ああ、こんないい景色が見られるときが来たんだという喜び、感動……いろんなものが入り混じった表現できない感情だったね。目の前で筒香(嘉智)が大舞台で打ってさ、何て言ったってあんなに不器用だったクワマン(桑原将志)が日本シリーズのMVPを獲っちゃうんだから、いろんな夢が重なった日でもあったよ。
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――中畑さんは2015年シーズン、キャプテンに指名しています。本人の成長を促す意味があった、と以前にうかがいました。 中畑 口下手で、(リーダーシップを発揮するのは)苦手なことだったかもしれない。「僕はキャプテンできません」って言っていたくらいだったから。ならば背中で引っ張るキャプテンになればいい。キャプテンをやることで人間的にも成長したよね。2015年の春季キャンプに、日本を代表する四番バッターになるための自覚とか立ち振る舞いを学んでほしいと思って、ゴジラ(松井秀喜)に来てもらった。何を学べたかと本人に聞いたら「存在感、オーラが違います」と返してきて、いいところに気がついてくれたなって。傷だらけのローラじゃないよ、オーラだよ(笑)。 今回、勝ちたい気持ちっていうのは誰よりも強かったはず。勝てないチームにずっといて、その喜びを感じることなくアメリカに渡って、悔しい気持ちを抱いて日本に帰ってきて。チームへの思いも強いなかで、人間的に成長したアイツがああやって日本シリーズの流れのど真ん中に立って活躍できたっていうのは嬉しいことだよ。 ――2連敗からスタートして敵地で3連勝。王手を掛けてハマスタに戻ってくるシナリオはどうでしたか? 中畑 いや、考えられないよ。みんなそう思っていたでしょ。2試合終わって、ソフトバンクは日本シリーズ14連勝なんだから。もう要塞だよ。それが第3戦、東(克樹)が10安打されながらも1失点に抑えてみんなで牙城を崩したわけよ。粘って、あきらめることなく戦って。俺がベイスターズで目指した野球がそこにはあったね。15連勝を阻んだことでチームが変わった。 やっぱり素晴らしかったのは、三浦(大輔)監督の采配でしょ。ピッチャー交代のタイミングは完璧だったし、調子の良い選手を優先する起用法もズバリ当たったよね。大輔自身も開き直れたんじゃない? シーズン中はどこか重たい空気を感じたけど、CSやこの日本シリーズは動くべきところは積極的に動いて、選手たちを“あきらめないぞ”“行けるぞ”という雰囲気に持っていったからね。表情も違っていたよ。 チーム全体で戦うという空気をつくりだして、その緊張感を持続させるのは難しい。勝ち試合をつくらないと、そういうものは出てこないから。今回のベイスターズはそれができていたよね。
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