ソフトバンクが春先から首位を独走。小久保裕紀監督は新人監督最多勝利の91勝をマークし、2位・日本ハムに13.5ゲームの大差をつけた。西武からFA移籍した山川穂高が34本塁打、99打点で2冠に。6月は月間打率.182、0本塁打とスランプに苦しんだが、小久保監督は四番から動かさなかった。7月以降は22本塁打と量産体制に。五番に近藤健介を据えた起用法も的中した。ポイントゲッターとして稼働し、打率.314で首位打者を獲得。主軸の柳田悠岐が5月末に右太腿裏の負傷で約4カ月離脱したが、柳町達、正木智也が奮闘して戦力が落ちなかった。投手陣は有原航平が14勝で最多勝に輝き、救援から先発に転向したモイネロも防御率1.88で最優秀防御率のタイトルを獲得。スチュワート・ジュニアが9勝、大関友久が8勝を挙げ、救援陣も安定していた。悔しさが残ったのは日本シリーズだ。DeNAに2連勝した後に4連敗。来年はリーグ連覇、2020年以来5年ぶりの日本一を目指す。
新庄剛志監督の下で、パ・リーグに旋風を巻き起こしたのが2位に躍進した日本ハムだ。2年連続最下位からジャンプアップしたが、決して一過性の勢いではない。新加入のレイエスが夏場以降に打棒爆発し、清宮幸太郎、万波中正、田宮裕涼、現役ドラフトで加入した水谷瞬ら成長著しい若手たちが躍動。郡司裕也、伏見寅威の活躍も光った。投手陣も自身初の最多勝に輝いた伊藤大海を筆頭に、加藤貴之、山﨑福也、金村尚真、北山亘基と強固な先発ローテーションを結成。若手の福島蓮、細野晴希、達孝太も大きな可能性を抱かせた。救援は河野竜生が34ホールドポイントで最優秀中継ぎ投手賞を受賞。田中正義が20セーブ12ホールドと守護神で経験を積み、39歳左腕の宮西尚生も30試合登板で19ホールド、防御率2.10と健在ぶりをアピールした。投打で選手層が厚くなり、新庄監督の目指す攻守でスキのない野球が浸透している。機は熟した来季は頂点を狙う。
ロッテは5月中旬から4つの引き分けを挟んで11連勝を飾り、首位のソフトバンクに食らいついたが、その後は連勝と連敗を繰り返して波に乗り切れず。シーズン終盤に楽天の猛追を受け、3位を死守するので精いっぱいだった。チーム内MVPと呼べる活躍を見せたのが救援の鈴木昭汰だ。51試合登板で27ホールド、防御率0.73と圧巻の安定感だった。野手では佐藤都志也が打率.278、5本塁打、45打点で「強打の捕手」として存在感を見せると、規定打席に到達しなかったが藤原恭大が74試合出場で打率.290、髙部瑛斗が76試合出場で打率.300とチャンスメーカーとして奮闘した。対戦成績を見ると西武に21勝4敗、オリックスに16勝8敗1分と大きく勝ち越したが、ソフトバンクに8勝16敗1分、日本ハムに6勝18敗1分と苦戦した。苦手球団を作らないことが来季のポイントになる。
楽天はロッテと熾烈なCS進出争いを繰り広げたが、シーズン最後の残り10試合で1勝8敗1分と失速。3年連続4位とBクラスから抜け出せなかった。ただ、チームは発展途上で大きな可能性を抱かせる。早川隆久、藤井聖は球団の左腕で史上初のシーズン2ケタ勝利をマーク。伸び悩んでいた藤平尚真がセットアッパーで頭角を現し、先発から抑えに配置転換された則本昂大が最多セーブのタイトルを獲得した。野手陣では小郷裕哉が12球団で唯一のフルイニング出場を達成し、リーグ2位の32盗塁をマーク。辰己涼介は全試合出場で最多安打(158本)のタイトルを獲得した。村林一輝、小深田大翔の二遊間も攻守で成長を見せている。ドラフト1位で5球団が競合した宗山塁の交渉権を獲得し、新たな風が吹き込む。三木肇新監督が若手たちの能力をどう引き出すか、采配が注目される。
オリックスはリーグ4連覇を狙ったが、まさかの5位に低迷。平野佳寿、山﨑颯一郎、宇田川優希、阿部翔太、山岡泰輔ら実績十分のリリーバーたちが故障やコンディション不良で稼働しなかったのは誤算だったが、新加入の吉田輝星、古田島成龍が活躍。低迷の要因はリーグ5位の402得点とつながりを欠いた打線だ。昨年の首位打者・頓宮裕真は打率.197と最後まで本来の姿を取り戻せず、宗佑磨、杉本裕太郎、中川圭太ら主力選手たちも精彩を欠いた。広島からFA移籍した西川龍馬は打率.258、7本塁打、46打点。満足できる数字ではない。太田椋は自己最多の91試合の出場で打率.288、6本塁打、40打点と結果を残したが、故障なく規定打席に到達すればまだまだ上を目指せる。宮城大弥、森友哉、若月健矢ら経験豊富な選手を先頭に、岸田護新監督の下で王座復権を誓う。
西武は球団ワースト記録の91敗を喫し、最下位に低迷。苦戦の理由は貧打に尽きる。350得点はリーグワースト。ソフトバンクの607点より250点以上少ない。チーム打率.212、60本塁打もリーグワーストで、規定打席に到達した選手は源田壮亮と外崎修汰のみ。結果が出ない時期もスタメン起用された西川愛也、山村崇嘉、蛭間拓哉が一本立ちしなければ、得点力が上がってこない。強打が魅力のドラフト2位・渡部聖弥、1年目の村田怜音もチャンスがあるだろう。先発陣は最多奪三振のタイトルを獲得した今井達也、10勝を挙げて新人王を受賞した武内夏暉、隅田知一郎、髙橋光成、平良海馬、渡邉勇太朗と力のある投手がそろっている。不安が残るのは救援陣だ。救援防御率3.41はリーグ5位。甲斐野央、平井克典、水上由伸ら実績のある投手たちの復活がカギを握る。
【文責:週刊ベースボール】